発声について

テシロギ氏のコメントを読み、考えたことをまとめる。

具体的な発声法についてさしあたり考えていることは2点

  1. 小劇場の俳優の発声
  2. 演劇初心者の発声

前者について

問題意識は以下の通り

  • 札幌小劇場俳優の発声は、「とにかく大声を出す」ことがベースになっていて非常に聞き取りづらい。20代の俳優が20代の観客を前にしている分にはかまわないが、双方30代の壁にぶつかる前に何とかできないか?

課題は以下のとおり

  1. (定義)声を出すのに不必要な力を全て抜き、必要十分な筋力だけで行われた発声を「地声」と呼ぶ
  2. (要件)観客数300くらいまでの劇場で全ての観客に響く地声を獲得するためのトレーニング方法
    • これは、特別なコーチングやトレーナーなしに、誰でもできるものであることが望ましい。

私が試行しているいくつかの方法

  • ハミング
    • ハミングを身体の響きに注意して行う。身体はリラックスして、ハミングの音源をできるだけタイトな球体にするようにイメージする。
    • これは身体が響くという状態を意識するための訓練
    • したがって、地声を身につける方法としてはいいのだが、本番に向け大きな声を出す段で、「大きな声を出さねばならない緊張」を回避する方策は別に設けなければならない。
  • テンカウント
    • ふくらはぎ、尻、背中、腕と壁に密着させて立ち、下のほうを向く、顔を徐々に水平にまで上げながら「ワン・ツウ・スリー・フォー.....テン」と声を出す。このとき、次の音は前の音よりも明らかに大きな音になるようにする。ワンはかなりな小声でないと、ボリュームアップできない(テンの時にはほとんど絶叫になっている)
    • 背中を壁につけるのは、無駄な筋力を使えなくするため。
    • 大抵の人がセブン・エイトあたりで、マックスになり、以降ボリュームアップしないのだが、最初はこれがわからないため、二人一組でお互いにボリュームアップの具合を指摘しあう。
    • この発声方法はかなりの確率で一度喉を潰すが、潰した後、地声となっていることが多い。ただし、やはり力任せ(喉・胸)が癖になってしまう場合がある。(どちらかというと筋力がある人にその傾向がある)

後者について

問題意識は以下の通り

  • 演劇の初心者が芝居を作る上で、ネックの一つが声である。小品を作って発表しても声が小さくて届かないことが多い。

課題は以下のとおり

  • 演劇に初めて触れる人向けに以下の要件を満たす発声トレーニングはないか?
    1. 週1,2の稽古で伝えられる。(トレーニング自体は毎日続けられるものでいい)
    2. 毎日続けるものだとして、家庭でできるトレーニングであること
    3. 100人以下の会場(公民館)で通る声を目指す

今のところは、こういう現場では呼吸とハミング、いわゆる演劇の発声(長音など)をやり、声が出ることに身体を慣らした後、個別都度、セリフ発声時の身体の緊張を指摘している。

経験上最も難しいのは、セリフを言うことに構えた身体が、声優もどきや朗読調の発声−小さいし、聞き取りづらいし、人の科白は聞いてないし、大変である−をしているときに、それをどう修正するかということである。したがって、この問題に対する解決策があればいいのかもしれない。

また私が想定している対象は、日常生活の中で地声ができている中高年層である。したがって、問題の立て方としては「獲得した地声を演じる際にそのまま使う方法」というのがより実践的か。