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ひとは動物の部分と人間の部分を持っています。それはかさなった二つの山に例えることができます。遠くから見れば、連なる二つの峯ですが、踏みいってみると、それらは、別々に存在するのではなく、さまざまな登攀路や小路、侵食しあう複数の生態系、別れてはまた合流する川々などを仲立ちに、全く一つの、かつ、多様な世界をなしています。けれど、尾根伝いに上へ上へと進んで行けば、いつのまにかもう片方の山は、遠くにある、また別の山にみえるでしょう。山が二つ連なれば、そこには、鞍点、つまり峠が存在します。峠に立つと、どちらの山がどちらの山で、自分がどちらから来たのか、どちらに行こうとしたのかが、わからなくなります。仮想の山と山を思い描けば、その間に部分をもたない理想的な点として、ただ一つの鞍点があるのですが、現実世界の山々には、何か所にもわかれ、いりまじった峠が、それぞれ点というよりは一定の広がりをもって存在しています。